課題解決から探る「生きる力」
小高ワーカーズベース代表の和田さんは小高のご出身。大学入学のタイミングで上京し、その後プログラマーとしてITベンチャー仲間と共に東京で起業。ネットでのジュエリー販売やゲーム制作のビジネスを続けながら2005年に小高にUターンしました。「戻ってきた小高で震災と原発事故を経験した当時は、3歳と1歳の子どもを連れての避難生活でした。当時それなりに稼いでいたわけだけど、避難中って食料もガソリンも手に入らないし、避難所にも入れなくて寝床がない。放射能の知識もなかったので、逃げられなかったら子どもたちも被曝して死んじゃうんじゃないかというような不安もありました。そんなふうに避難生活を送っていると、稼いでいたとはいえ、「生きる力」が全くないなと痛感して。いろんな人が助けてくれて生きてこれたことを振り返ると、収入は大事だけどその柱がぽっきり折れた時に社会の中で生きていけなくなるというのはかなりリスキーだと思ったんです。一本一本の柱は細いかもしれないけど、収入以外にも地域とのつながりをたくさん持っている方が人生として安定するし面白いんじゃないかということを気づかされました。自分にとっては課題=ビジネスの種で、小高には誰もやりたがらない課題がたくさんある。日本のような成熟した社会にそんなフィールドってなかなか存在しないと気づいた時に、この地域の課題を解決していくことを仕事にしていこうと決め、小高ワーカーズベースを立ち上げました」
和田さんは、2015年に「HARIOランプワークファクトリー小高」としてガラス細工事業をスタートさせ、ランプワーカーさんを雇用しながら、2019年に自社ブランド「iriser」を立ち上げました。