ロゴ:ふくしまみらいチャレンジ

白木 美穂、佐藤 久美

ハートオブワン

犬と人の「自然な」共生を。ワンちゃんとの暮らしを支えるプロフェッショナル

あだたら高原にひっそりと広がるウエディングリゾートのすぐそば、森に囲まれて佇むハートオブワンさんのお店にお邪魔しました。姉妹経営のこのお店では、ドッグカフェやドッグホテル、トリミング、物販などワンちゃんとのライフスタイルをサポートする様々な事業を展開しています。
地元福島の馬肉を使ったワンちゃん用おやつの開発ストーリーや、震災を経てより強くなった「犬と人の共存」に対する思いなどを語ってくださいました。

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食事からしつけまで、ワンちゃんと愛犬家のトータルケア
お店にたどり着くとまず、ガラス張りのお洒落なトリミングルームが目を引きます。出迎えてくださったのはオーナーの白木美穂さんと、妹の佐藤久美さん、そして看板犬のユウくん。店内には、一般のお客さんが利用できるカフェ兼ショップスペースがあります。商品棚に並ぶワンちゃん用のおやつや服、マナーグッズなどは全てハートオブワンさんオリジナルの商品です。
「東日本大震災の5年ほど前に、家庭犬のトータルケアを行う「Dog cafe WAN」を楢葉町で立ち上げました。震災で店舗が被災してしまったのですが、1年ほどで事業再開を決め、新たな地として選んだのがもともとよく遊びに訪れていた二本松市の自然豊かなあだたら高原。震災の経験から「心はひとつ」の意味を込め、「Heart of WAN (ハートオブワン)」という新たな名前で、ワンちゃんとのライフスタイルのサポートを続けています」
注目の商品は、福島県の名物のひとつでもある会津産の新鮮な馬肉を使ったワンちゃん用のおやつ。実は馬肉はワンちゃんにもとても適した食材なのだそう。
「馬肉といえば熊本も有名ですが、軽量馬を使う会津の馬肉は熊本産に比べてサシが少なく、低脂肪・高タンパクで、ワンちゃんの健康食品としては非常に適しているんです。二本松に来たことで、内臓や頰肉などの新鮮な素材が会津から手に入れやすい環境になったことも新商品開発を後押ししました。会津の中でも信頼関係のある馬農家さんとのみ取引をし、自分たちで買い付けに行きます。だからどんな餌を食べて育った馬なのかも把握できているんですよ。もちろん商品の加工も、店内にある加工スペースで全て自分たちの手で。それから、ドッグカフェで提供されているメニューに使用する野菜も敷地内の畑で作り始めていて、薬膳の手法も取り入れ、季節に合った食材選びで体温調節も考慮しながらメニューを考えています」

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被災経験から得た気づきから
幅広い事業展開やこだわりの素材を使った商品づくりなど、お二人がここまで丁寧に手間ひまをかけてワンちゃんや愛犬家さんに寄り添う理由は一体何なのでしょうか。そこには、子どもの頃から犬とともに過ごした経験や、楢葉町での震災の経験も大きく影響しています。
「私たちが生まれ育ったのは今の伊達市で、子どもの頃から大の犬好きだったので、ずっとワンちゃんがそばにいる暮らしをしてきました。それぞれ家庭を持ったことで一旦はそんな暮らしから離れたものの、やっぱり犬や猫が好きという気持ちは変わらなかったんです。そこで、ドッグカフェやトレーニングの事業を立ち上げるため、今から15年ほど前に海沿いの自然豊かな楢葉町に家族全員で移住しました。楢葉町で立ち上げたお店は太平洋が一望でき、サーファーのお客さんも訪れる最高のロケーションだったんですよ」
開業から5年ほど経って、お客さんからの信頼や実績がようやく積み重なってきたところでの東日本大震災。海を目の前にした店舗はすべて津波にさらわれてしまいました。
「震災当時、お店には私たち姉妹とスタッフ1人、そしてお客さんからお預かりしている子も含めワンちゃんが18頭いました。津波が迫る中でしたが、1頭も命を落とすことなく車で全員無事に避難しました。それができたのも、日頃のワンちゃんたちのトレーニングがあったからこそだと思っています」

妹の久美さんは、中学生の頃からトレーナーとしての経験を積み、上級愛玩動物飼養管理士の資格を持つ、プロフェッショナルなトレーナーです。
「しつけはトレーナー、美容はトリマー、病気になったら獣医さん、と分業になっていることが多く、家庭犬をある程度トータルでケアできるプロフェッショナルな人材が案外いないなと思っていて。総合的に日頃のサポートをできるプロがいるお店を開きたいという思いが、楢葉町での開業につながり、さらに姉が薬膳に詳しいこともあって、ワンちゃんの食事からも健康づくりをサポートできるようになりました。震災を経て、避難生活をする中、当たり前だと思っていたワンちゃんとの生活を当たり前に送れない経験をしたことで、これまで取り組んできた地道で丁寧なワンちゃんの日常のケアがいかに重要かを再認識しました」
現在「犬の保育園」事業も展開するハートオブワンさん。公共空間や突然のトラブルにもストレスを感じにくくなれるようなトレーニングを行なっています。
「いろいろな人や場所、物、音などに慣れるトレーニングを実践しています。日中働きに出ている飼い主さんは、朝ワンちゃんを預け夕方お迎えに来ます。人間の保育園と同じようにちゃんと連絡帳や名札があって、トレーナーとの面談や次回までの宿題もあるんですよ。今日も時々雷が鳴ってますが、ワンちゃんたち大人しいでしょ?こんなふうにちょっとしたことでは動じず程よく鈍感になれるような常日頃の積み重ねが、大きな災害が起こったときにも役立つんじゃないかなと」
こだわりの会津産馬肉の商品も震災の経験から得た気づきをもとに開発されています。
「それまで当然のように手に入っていたワンちゃんのフードが、震災後手に入りにくくなった時期がありました。栄養や健康を身近なところに常にある食材で考えることの大切さに気づかされましたね。そんなとき福島の身近な食材を薬膳の視点から見直してみたんです。例えば馬肉は体温を下げてくれる効果があって、逆に桃は体を温めてくれる食材。なんだ、こんなに健康的な食材が地元にたくさんあるじゃないか、と。自分たちの目の前にある食材で作ったものを提供できるということが、安全・安心にもつながるだろうということでたどり着いた商品です」

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人も犬も「自然」でいられる社会を
被災事業者になったからこそ、ファッション感覚で楽しいだけのドックカフェやトリミングサロンではなく、ワンちゃんがワンちゃんらしくいられる形での健康サポートや公共マナーを守るためのトレーニング・商品開発などにより一層着目するようになったお二人。
「みんながみんな犬好きではないし、いつ何が起こるかわからない世の中で、人と犬が共存共栄していくために大切なのは、飼い主としての責任やマナーを見つめ直すのはもちろん、どうやったらワンちゃんにとってのストレスを軽くしながら、人も犬も『自然』でいられる社会を作れるかを考えることだと思います。最近は、室内犬に散歩は必要ないという話も時々聞きますが、もともとは野生の動物ですから、それは自然じゃないですよね。生態に合ったケアをブレずに続け、人も犬も、メンタル面と身体面の両方とも健やかな毎日を過ごせるように。家庭によってワンちゃんと接していられる時間はまちまちですから、私たちとしてはそれぞれのライフスタイルに合わせた食事プランやトレーニングプランなどできるだけたくさん引き出しを用意して、トータルサポートを続けていくことが目標です」

人間と同様、ワンちゃんが『家族』であり、立派な『社会の一員』であり、『自然の一部』でもあることを伝えたい、そんな思いがハートオブワンさんの事業の根底にあるのかもしれません。

つながる

「愛犬とともに充実した生活を」
福島県二本松市のHeart of WAN(ハートオブワン)は、トリミングサロンやドッグカフェ、ドッグホテルとして営業しております。また、自家繁殖(ブリーダー)を行っております。愛犬と一緒に参加できる薬膳教室やチョークアートなどのワークショップも開催中です。

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