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岩井 哲也

菅野漬物食品株式会社 みそ漬処 香の蔵

昭和15年創業、漬物一筋で、地元から愛され続けてきた。菅野漬物食品さん。今回お話をお伺いした、統括マネージャーの岩井哲也さんは、「みそ漬処 香の蔵」の店舗運営や、直売所や駅の店舗と直接取引をおこなう地元密着の営業を担当しています。
縮小傾向が続く漬物業界で、世の中の流れや話題をキャッチしながら急成長を続けている菅野漬物食品さんのキーパーソンに、商品づくりへの想いや軸についてお話しいただきました。

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「正直な気持ち」がバズった
『お願いします、買ってくださいセット』
『ヤバい!怒られる!余ってしまった。セット』
必死すぎるネーミングが話題となり、Twitterで2万5000件以上もリツイートされた投稿に、見覚えがある方もいるかもしれません。コロナウイルスの感染が拡大し、全国的に外出自粛や店舗営業制限が出ていた昨年5月、この独特なネーミングセンスで話題になったのが菅野漬物食品さんです。
「目の前に山積みになった在庫があって、これどうしよう、と。3月ごろまではわりと他人事だったんです。それが昨年の4月くらいですかね、出荷予定だったものがキャンセルになったり、仙台と福島にある自社店舗が休業になったため返品されたり、工場ですでに生産してしまった在庫だったりが一気に積み重なってしまって。それを思うと夜は眠れないわ、突然目が覚めてしまうわで、その時の本当の気持ちをネーミングにしました。それをみらいチャレンジプロジェクトさんに提案していただいた「困った市」に出品したところ、話題になって5000件くらいご注文を頂きまして。山積みの在庫がスパッとなくなり、何と追加の生産依頼もあって。あのおかげで今ここにいられるという感じです。おかげで昨年5月は私の部署だけものすごい伸び率でした(笑)アイデアでバズらせようと思っても消費者には分かってしまうので、正直なのがよかったんじゃないでしょうかね。正直で応援したくなるような。日本人特有の「お互い様」という共感を得られたんだと思います」

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食卓の洋食化に合わせた商品開発
逆境にも屈さず、波に乗っているように思える岩井さん達ですが、漬物業界全体を見るとなかなか厳しい状況なのだそう。全国の漬物関連事業者が加盟する「全日本漬物協同組合連合会」の加盟社数は、かつて約2500社もあったのが現在では800社ほど。食の洋食化が進み、一日の食生活の中に漬物が入る余地が少なくなり、日本の漬物業界はかなりの勢いで市場が狭まってきています。

「残念ながら漬物が食卓に並ぶことはだんだん少なくなってきました。朝ご飯はパンとコーヒー、シリアル。お昼はラーメンやパスタ。夜はハンバーグにカレーライス。カレーライスに福神漬やラッキョウが付くくらいですかね。「ご飯・味噌汁・お漬物」のスタイルだけではなくなっている日本の食卓ですから、今から「漬物食べましょうよ」「米飯食べましょうよ」と言ったところで、すでに食生活が大きく変わってしまっているのに何言ってるんですかとなるだけです。だったら今の食卓に乗せてもらえるようなものを作ればいい、という切り口で考え、できあがったのが『クリームチーズのみそ漬けシリーズ』です」

現在は販路を拡大し、セレクトショップや酒屋さん、キャンプ用品を扱うお店にまで並ぶようになったクリームチーズ商品ですが、開発のきっかけは、2011年の東日本大震災後の、社長の一言でした。

「震災のあった3月11日から1ヶ月も経たない4月4日に再オープンしまして、その頃は店の前の道路を通る車もまだ自衛隊と警察の車両ばかりで、一般の方はほとんど走っていませんでしたね。再オープンをした後の5月ごろだったでしょうか、社長が急に「時間はたっぷりあるし、お客さんも来ないし、新商品でも考えるか!」と号令を出したんですね。現場にいた私たちは、このタイミングで新商品!?と戸惑いつつも、社長の強い意思を受けて開発に取りかかりました。実は震災前からクリームチーズの味噌漬けのアイデアはあったんです。あの時芽を出していたクリームチーズ商品はどうでしょう、という話になり、そこから急速に開発を進めました。試行錯誤の末、震災の年の12月には新商品の販売を開始し、そこから5年ほどかけて弊社で一番売れる商品にまで成長しました。今考えると社長の号令とスピード感があったからこそですね。震災の2年後、3年後ではなく、2011年のうちに発売できたことが良かったのかもしれません」

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ちょっとでいいから枠を超える
毎週月曜午前には、必ず商品開発会議を行なっているそうです。岩井さんと商品開発室のメンバー3人、社長、資材担当の合計6人で、新商品の提案や試作、既存商品のブラッシュアップなどをしています。

「新商品アイデアをふるいにかける際の基準が「食べて感動するか」。ありきたりなものを作っても埋もれますし、奇抜すぎてもよくないですしね。「感動」というみんなが共感できる部分を軸にしているところはあります。営業でも接客でもそうです。「これくらいしてくれるだろう」と思われているところをほんの少し超えてあげることで感動してもらえる。ちょっとお声がけをするとか、ちゃんとお客さんのニーズを丁寧に聞いて商品の提案をするとか。それでファンが増えたり、〇〇さんいますかと指名をもらえたりしますしね。「ちょっとでいいから枠を超えろ」というのは言い続けています。
今後は、香の蔵の漬物を福島県の名物にしたいと真剣に思っていて。福島といえば、ままどおる、薄皮饅頭、桃、日本酒などですけど、その中に一つ、香の蔵があるよ、というふうになれるんじゃないかなと本気で思ってます。今日本酒のおつまみとしての認知も広まっていて、そういう立ち位置での売り方もありだなあと。伝統を守りつつ、ちゃんと現代の食生活や流行にも合う商品づくりを続けていきたいです」

正直な気持ちで消費者の方と向き合う。常識にとらわれずちょっと枠を超えてみる。「共感」や「感動」を自然と巻き起こす姿勢が、香の蔵シリーズが人気であり続けている秘密なのかもしれません。

つながる

1940年創業の漬物屋でございます。優れた品質の商品づくりをモットーとしており、お客様から真に愛されるお漬物を提供致します。経営ビジョンは「お客様に感動を与え続ける独創企業を目指す」であります。今後とも経営ビジョンを達成すべく精進してまいりますので、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い申し上げます。

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